美しい夜だった。夜空は、路傍にうちすてられた孤独な木々の梢に縁取られ、そのキャンパス上には、あまたの星が煌々と輝いていた。白んだ星たちの強い光りは、美しい今日の出会いを象徴しているかのようだ。ウナイでみた夜空は僕らの心をうった。素晴らしい夜だった。今日の感動の余韻に浸りながらこの満天の星空を眺めていると、コオロギやカエルの鳴き声までもが別れを惜しむ声のように聞こえてくる。施設からジープで畦道をひた走ること30分、村についた。村人たちは、ぼくら客人を伝統的儀礼で出迎えてくれた。ココナッツをのせた銀色の容器を頭の上にのせた華奢な少女たち4~5人が30人ほどの隊列の先頭にいる。
彼女たちを取り囲むようにして4人の少年が緑色した十字架をあしらった旗を誇らしげに掲げている。少女らの後ろには大地と空の神様とされる女神像が二人の男に抱えられて悠然と控えている。5メートルほど進む度に行進は止まり説法師の男が唱えるお経を聴いてから人々は歌い始める。時折、空砲が鳴り響き、静寂につつまれた厳かな村の空気に風穴をあけた。じつに神聖な雰囲気が終始ぼくらを貫いていた。
めぐこの一員で来てよかったと感じる瞬間はまさにこのような時である。ぼくらを心の奥底から歓迎してくれる。かれらにとって最大限のもてなしをもってぼくらと温かく接してくれる。誰だって自分の部屋を知らない人に写真を撮られたり、観察されるのは嫌なはずだ。しかし、かれらはそうした素振りを一切ぼくらに見せることなく深い慈しみをもって家中を案内してくれる。個人や他の団体で訪問してもこのような待遇を受けるのは相当困難なはずだ。それというのもめぐこが築いてきた40年という歳月の重みが現地との固い絆を育んできたからである。この雑感を今ご覧になっているOB・OGの方々が築いてきた絆がいまのぼくらにまで繋がっている。
非常に雄大で壮大な人の環。
小さなちっぽけなしかし偉大な一人一人の総体としての環。このきらびやかな星空を見上げていると、そうした一人一人の耀きを思わずにはいられない。施設に到着する頃には、星はもう見えなくなっていた。鉛色の雲で覆われた空は僕らに責任を求めている気がした。今度はぼくらも。夏だというのにぶるっと身が引き締まった。
総合グローバル学部総合グローバル学科2年 河野
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